ヒット商品は偶然生まれるものではなく、ある一定の確率で生まれます。
大事なのは、ヒット商品を産むことではなく、ヒット商品を産む確率をあげることです。
そのためには、ある一定の法則に基づいたアプローチがあります。
新商品・新分野の創造に必要な8つの要素
「考えること」は最小の投資で最大の効果を産む
B2Bの商品開発は、
・営業部門が顧客ニーズを聞いて開発を依頼する
・技術部門が新たな技術やアイディアを元に製品化する
のいずれかがほとんどです。
そしていずれの場合も、多くの市場調査をすることなく発売されることが多いです。
「ものを作ってみないとお客様の反応はわからない。」と言う考えです。
しかし、100のアイディアで3つのヒット商品しか生まれない中で、ものを作ると言うのは大きなコストがかかるアプローチです。
何を作れば良いのかがわかっていた高度成長期と違い、何が売れるのかが見通せない時代だからこそ「作る前に考える」ことが重要なのです。
アイディア出し
B2Bなどの情報が比較的取りやすい事業のアイディアは、手法を覚えることで比較的容易に考え出すことが出来ます。
例えば、
・売れなかった商談の分析から必要な製品の要素を得る
・ある商品を購入している顧客が、他にどう言う商品を購入しているかを知る
・マーケットリーダーがいない製品カテゴリーを見つけ、なぜそうなっているかを分析する。
・既存製品に進歩の速い分野の技術が加わった場合、既存顧客以外に他にどう言う顧客に売れるかを考える。
などです。
こうしてアイディアを多く出し、その中から市場性や売り方を考える中で、面白いアイディアを思いつくことが可能になります。
市場性と売り方
アイディアを形にする前に、まずそのニーズに市場性があるかを考えます。
市場性とは事業化するに値する規模の市場があり、かつ、開発投資を含めた商品の原価を上回る価格で売れるのかと言うことを見極めることです。
例えば、後片付けロボットが家庭にあればいいなと考える場合、「どうすればそのロボットが作れるか」を考える前に、「本当にそんなニーズが一定の規模で存在するのだろうか?」「いくらだったから買うのだろうか?」と考え、大きく捉えて売れそうかを見ることです。
市場性を見る場合、「市場」という概念的なものより「個別顧客(ペルソナ)」で捉える方がイメージがしやすくなります。
すなわち下記のようにブレークダウンして、
市場規模 = 価格 x 数量
数量 = 顧客数 x 1社あたり平均購入数
価格、顧客数、1顧客あたりの購入数でイメージします。
次に売り方ですが、実際に顧客にどうやって製品(商品)の良さを伝え、売るのかを考えます。そのイメージの中で、このアイディアが現実的か否かが見えてきます。例えば、営業担当が直接説明しないと理解できない難しい製品を10万社に売ることは不可能です。
市場性があって売り方がイメージできると、そのアイディアは見込みが高いアイディアとなります。
商品コンセプト
商品の要求仕様です。
大事な点が2つあります。
一つは、背伸びして新しいものにチャレンジすることです。商品コンセプトの段階で今出来るものを考えてしまっては意味がありません。売れると思う仕様を書きます。
もう一つは価格です。価格が安過ぎると仕様を満足する開発は難しく、高すぎると売れません。その価格と性能・品質・機能のバランスをどうするかがコンセプト作りの最も重要な点です。
商品と市場のバーチャル対話
調査ではなく、実際に見込み顧客のもとへ向かい、本当に売れるのか、顧客はなぜ買ってくれるのかを納得するまで見込み顧客に確認します。
大事な点が2つあります。
一つは、買ってくれそうな顧客ばかりを選ばないと言うことです。好奇心が強い顧客は新商品と言うだけで欲しがります(イノベーター)。しかしそれでは大きく伸びません。慎重だが商品が良ければ購入すると言う層(アーリーアダプター)と対話する必要があります。
二つ目は、実際に商品を作らずに見込み顧客に尋ねることです。
先に記載した顧客ニーズからコンセプトに落とし込む方法を取れば、何が顧客のメリットになるかがはっきりしていますので、製品がなくてもヒアリングすることは可能です。
なお、IT業界では、ソフトウエアのβ版を作り、それを市場に出すことで顧客ニーズを知るという手法が、Product-Market-Fitという概念で確立されています。製造業で製品のβ版、すなわち試作品を作るのはお金と時間がかかるため、バーチャルで行うのがベストです。
技術リソースの探索
市場ニーズから商品コンセプトが作られると、商品開発への要求度は総じて高くなります。
大事な考え方は2つです。
一つは、出来るかどうかを考えるのではなく、出来ないかどうかを考えることです。
もし論理的に出来ない根拠があれば、検討することが時間の無駄になります。
二つ目は、今、世の中に存在するか否かを確認し、存在するのであれば、どうやったら自分たちも出来るのかを考えることです。
例えば、片付けロボットの商品コンセプトの場合、「何をどこへ片付けるのかの情報インプットが得られない」「対象物を見つけるための画像やID技術」「対象物を掴む技術」「自分の位置を認識し目的の場所へ向かう技術」などをあげ、何が世の中で出来ていて、何が出来ていないのかを把握します。そうして今の世の中の技術で出来る範囲で市場ニーズを満たすとすればこう言う商品になるという提案が生まれます。
大切なのは、自分や自社が出来るか出来ないかでなく、世の中が出来ているか出来ていないかです。本当に売れると確信できる商品コンセプトがあれば、資金や技術はどこからも集めることは可能です。
売れるイメージの数値化
事業計画が数字遊びになることはよくあります。
大事なのは数字から売れるイメージが湧き出ることです。
そのためには、どのくらいの数の顧客に、1社あたりどのくらいの数の商品が、どのように売れているかのイメージを先に置くことです。
事業計画書は、そのイメージを数字にしたものです。
また、イメージが出来れば、価値を高く認めて買っていただけるお客様、値段交渉のきびしいお客様などが自然に出てきます。そしてそれが市場セグメントとなり、複数の想定単価になります。
市場セグメントが決まり、各々に複数の想定単価と顧客数及び1社辺りの商品数がイメージされると、想定原価が出ます。そして想定原価が出ると想定利益の計算が出来ます。
事業ビジョンと商品ライフサイクルで決断
上記のイメージの数値化を行う際に、その商品は、1年目、2年目、その後、どう言う売れ方をしていき、何年の寿命の製品かもイメージします。類似製品があれば見当はつきますし、過去データから分析も可能です。そうして、商品ライフサイクル全体での利益と開発費を比較して、投資対効果を計算します。
投資対効果の計算は、会社全体の方針とも関連します。新規分野を伸ばす戦略であれば新規分野の商品の投資対効果は甘くなりますし、既存製品では厳しくなります。
新商品リリースのイベント化
新商品の発売はiPhoneや映画に代表されるように、B2Cの世界では一大イベントです。様々なキャンペーンを行い、潜在顧客にその商品を知ってもらいます。
そのためには、集中して一斉に行うことが大事です。消費者は繰り返しその商品に接することで初めて印象が残リます。
ところが、B2Bの世界では、まずはお得意様に紹介しよう、まず大きな展示会で出典しようなどの思いから、断続的に少しづつリリースされる場合が多いです。
そのため、どの顧客に新製品の情報が伝っていて、どの顧客に伝わっていないかの把握も難しくなります。また、営業担当も前から知っていたということで、正式リリースのタイミングでは盛り上がらない状態になります。
さらに、新商品を一斉に行う際のもう一つのメリットは、新製品に対する顧客への反応を多く取ることが出来る点です。営業担当が一斉に潜在顧客へ紹介することでお客様の声を一度に集められます。そして商品を企画した狙いと実際の結果で何が違うのかをすぐに理解することが可能になります。そしてそれをさらに次の商品に活かすことが可能になります。