日本には真面目な社員が多く、反省する風土があリます.
だから、仕事は常に反省し次の改善を求めます.それが日本流PDCAです.
一方で、世界には反省をネガティブな発想と捉えたり、
真面目さをつまらないと感じるところもあります.
その土地にはその土地のPDCAがあります.
世界で事業を展開するには、その土地土地にあったPDCAを回す組織の構築が必要です.
海外でPDCAを回す組織に必要な8つの要素
言い古された言葉ですが日本は島国です
言い古された言葉ですが、日本は島国です.
そして稲作という集団作業を行う農業を2000年以上に亘り行ってきた国です.
したがって「相手のことを理解している」あるいは「相手のことを頑張って理解すべきだ」と
言うことがコミュニケーションの前提になっています.
しかし、海外の多くの国は大陸の上にあり、異民族が混じり合う国家を形成しています.
また、集団作業でない農業や、その他の産業や貿易を基盤にして成り立った国家も数多くあります.その結果、「相手のことは理解できないのは当然だ」
「理解して欲しい場合、話し手がしっかり伝えるべきだ」と
言うことがコミュニケーションの前提になっている国も多くあります.
これは一つの例にすぎませんが、このような違いの中で、
組織の意思決定のあり様や物事の進め方が異なるのは当然です.
この当たり前を理解することが全ての第一歩と考えています.
組織のあり様で譲れないものを知る
大学を卒業してある会社に入社し、長い間その会社にいると
自社の特徴を他と比較することが難しくなります.
人が自分では自分の強みに気づきにくいのと同じように、組織も自分では気づきにくいものです.
その強みは、長年企業の構成員が積み上げてきたものかも知れませんし
創業者の思いが脈々と流れ続けた結果出来上がったものかも知れません.
あるいは顧客との関係の中で培われたものかも知れません.
ただ、自社の組織の中で「この点は譲れないもの」がはっきりしていればしているほど
海外に事業を展開する際には大きな指針となります.
グローバル人材の育成
組織は人です。世界各国に事業を展開する時は、さらに人の要素が大きくなります.
人を育てる事、それが全ての運営の基本になります.
海外転勤を行うことが出来る人材をここではグローバル人材と呼びます。国籍は関係ありません.
ただ、多くの日本人は社命に逆らわないためグローバル人材かその予備軍になっています.
一方、海外の人には海外転勤を拒む方も多くいますので、採用時に分けられることになります.
グローバル人材は海外の事業展開の差によって求められるスキルが異なります.
開拓時期はまず海外の方と意思疎通していくことが決定的に大事です.
その際は言葉は当然のこととして、異文化の理解・受け入れは重要です.
次に事業を広げる際は、事業そのものの深い理解が重要です.
さらに海外の人材をマネージしていくには、現地の人々の理解、言語力、コミュニケーション力
事業の理解、そしてマネジメント能力がバランスよく必要となります.
さらに海外の市場を独自に大きくしようとすれば、そこに企画力が要求されます.
国ごとの文化的違い
環境や風土によって性格は異なります。いつも晴れている場所と曇りや雨の多い場所で
性格の平均を取ると異なりますし、寒い地域や暑い地域、
緑が豊かな地域か砂漠地域などでも異なります.
それが性格に影響を与え、文字通り「風土」を作り上げます.
風土だけでなく、歴史的変遷や宗教的影響はもちろん、交通の要所か否か
主要産業が何かなど様々な背景で異なった考え方や常識を持つようになります.
この風土を理解しないと、マネジメントは難しいのですが
実際に外国人がそのすべて理解するのは不可能です.
一方、ビジネスの世界では、国や民族を超えて仕事を共にする場合、
皆がそれぞれの文化的背景を極力前面に出さず
ビジネスライク、すなわち合理的判断を行うよう努めます.
私たちは、合理的判断に影響を強く与えるもののみを抽出し、それを5つの軸として表しました.
(1)腹落ちかMake Senseか?(2)イメージか言語化か?(3)納得か命令か?
(4)損得かそれ以外の何かか?(5)労働は善か否か?
の5軸です。
組織を生態学的にデザインする
よく「人は組織の歯車」と言う表現をしますが、歯車であれば故障したり無くなると機械は動かなくなります.
実際には、人は歯車でなく、生体における細胞です.
細胞がなければ生命を維持出来ませんが、一つ無くなっても死ぬことはありません.
組織を生体に例えると、組織に起こるシステム的な側面が見えてきます.
「臓器という役割を持つ機能別部署」、「異物を受け付けない免疫機能と、外部からの変革への抵抗」
「情報網が瞬時に行動を促す神経網とトップダウンによる指示系統」
「ゆっくり浸透し体質を変えていくホルモンと組織に浸透し企業体質を変えていく思いやビジョン」
「栄養が血流を流れエネルギーとなるように、外部から利益をいただきそれをエネルギーに再生する企業」
など、組織との類似性が見えてきます.
日本で出来上がった組織は日本的な背景からできている場合も多く
海外で組織を構築する際はそれをコピーするだけでは上手くいきません.
しかし逆に海外の組織をコピーするだけでもうまくいきません.
自社の事業にあった組織をゼロベースで考えるとき
この生体に比して考えると言うアプローチは一つの視点を与えてくれると考えています.
言葉に命を吹き込む
何気なく使っている言葉には、言葉が持つ意味と同時に感情を換気するニュアンスが含まれています.
それは非常に微妙に、ゆっくりと組織と同化していきます.
日本語の場合は、漢語や外来語、そして大和言葉があり
似たような意味合いのものもその捉えられる感覚が異なることがあるため
半ば無意識にうまく使い分けられています.
例えば「議論」という言葉は少し棘を感じますが(英語のarugumentに近い)
「ディスカッション」と言えば棘はなくなります.
大和言葉の「打ち合わせ」や「すり合わせ」とすれば
お互いの意見を合わせ込むという感じが強くなります
「反省」と「振り返り」も受け取るニュアンスは異なります.
「反省」は誰か個人を責めるようなネガティブな意味が入り込んでしまっていますが、
振り返り」は起こった物事を改めて見直し良い悪いを含めた知見を見出そうという意味です.
「レビュー」も同じ感じです.
このように日本では大事な言葉は意味だけでなく
感情を換気するニュアンスにかなり気をつかって使っていますが
外国語に直す際には、どうしてもそこまで気がまわりません.
そのため、知らず知らずの内に意図が異なって組織に浸透する場合もあります.
現地の信頼できる社員と、日本語でどういう状況でどういう意味で使っていたかを明らかにしつつ
現地の言葉になおすとどうすれば良いのかディスカッションすることはとても大事なことです.
特に、組織が大事にしている口癖のような言葉はより深く顕在知化して現地に伝えていく必要があります.
社員との接点の最適配置
経営幹部の人と社員との関係には「会社対役割」、「役割と役割」
「会社と個人」、「個人と個人」の4つの関係があります.
例えば、経営幹部かつ営業の責任者であるAさんが
経営幹部として会社を代表し会社の方針を社員に伝える場合は会社対役割です.
営業責任者として営業マネジャーと相対する場合は役割対役割です.
人事部が会社を代表しプライベートの一個人の退職やハラスメントの話をする場合は会社対個人
そして食事に行ってプライベートの話をする場合は個人対個人なります.
日本では、この境界がクリアではありません.
昼間は建前で、仕事上の大事な本音話は、飲み会の席で行うという場合もあります.
この感性を暗黙知のまま海外に持ち込むと上手くコミュニケーションが出来ない原因になります.
したがって、国ごとや組織の発展段階ごと、会社の風土に合わせ、何をどういう接点で話すのか
またその頻度はどうするのかということを設計していく必要があると考えています.
ローカル人材の育成
現地のローカル人材を育成するのには2つの大事な点があります.
1)会社にとって育成する目的は何か?育成した社員は自社にどう貢献するのか?
2)育てられる人材にとって育った後満足して取り組める仕事が自社にあるのか?
営業の場合、商品知識が増えると売上が伸びる製品や市場もあればそうでない場合もあります.
人材が育った後、責任範囲が大きくならなかったり
責任範囲が増えたのに報酬が上がらない場合は
その社員は別の場所で自分のスキルを使おうと考えるでしょう.
そうすれば会社にとっては損失です.
特にマネジメント層を育成しようとする場合、将来、その国のマネジメントはどのように行っていくのか、というあり様も同時に考えておく必要があると考えています。
ただ、「だから日本人でやる方が良い」と言う考えも売上や利益の上限を作ることになります。
組織運営の仕組み化
上述したように組織運営にとって重要ですが
表面には現れてこないことがらは多くそして深いところにあります.
これらを考慮せず表面的に仕組み化を行えばその仕組みは上手く働きません。
運営の「ハードウェア」と言われる部分は、論理体系として整理されたものが多くあります.
ここではその中の特に重要な6つを列挙しています.
・合意形成
会議、トップダウン、定性、定量など
・役割と責任
責任と権限・報酬の連携も重要。
・採用と昇格
どういう人は入社させないのか、どういう人を組織の中心にしていくのか?
・判断基準の明文化
費用対効果の計算方法。計算できない場合の判断基準
・評価方法
定性と定量、短期と長期の貢献、業績への貢献と組織への貢献 など
・課題発掘
現場で日々起こる課題や問題を早く発見する仕組みをどう構築するか