​グローバル化に向かう段階的変化の重要性

 製造業の海外展開は通常代理店を通した輸出から始まります。その後、より専門性を強化するため、販売会社を設立、一方で事業の発展を促し、もう一方で運営の発展を促進します。これら事業と運営の促進には、本社の事業機能のグローバル化と、財務や人事などのコーポレート機能のグローバル化が必須となります。そして、本社の事業部門とコーポレート部門の海外への関与が強くなります。

一方で、海外には海外の組織がありそれぞれの国で事業や運営を行っています。本社の事業部門やコーポレート部門の関与が強まると、実行部隊の上司、例えばアメリカにおけるある事業部の営業マネージャから見た時の上司は、一方で本社事業部のトップであり、一方でアメリカを管轄しているトップとなり、上司が2人になります。

 

この組織形態を一般的に「マトリックス組織」と言います。

マトリックス組織は欧米の多国籍企業では一般的ですが、日本ではまだまだ進んでいないところも多くあります。

ただ、トップダウンで組織改革を断行する欧米企業と異なり、現場の運営を中心に全体運営を構築していく日本企業には突然の組織変更はリスクが伴います。​したがって、日本企業のグローバル化は段階的に行うことが大変重要です。 

多くの日本企業には海外営業部、海外販売部、海外事業部のような海外専門部署があります。海外に進出する方法として、言葉の壁や貿易の壁を超える目的で作られたものです。

 

その部署は海外を専門にして幅広く取り組むため、自社の事業の理解に限界があり、どうしても取り継ぎを行うに留まる場合も多くあります。

理想的には、海外専門部署の役割は、「海外市場の開拓者」から「事業発展の支援者」へ変化していく必要があると考えます。各事業部門や、海外の現地法人の支援を行う部署への役割変化です。

もちろん、海外市場への自社の事業の展開には程度の差があるでしょうから、まだ開拓者である市場や国もあれば、事業部門と現地拠点が主体となって事業運営を行う中で運営面での支援に留まる場合もあると考えます。ここで役割を明確に切り分けず曖昧な中で行えるかどうかがグローバル化への段階的変化の中で重要な一つの要素となります。

本社海外専門部署の役割の変化

本社コーポレート部門には、財務経理、人事総務、情報システムなどがあります。日本企業において、これらの組織はその管轄が日本国内に留まっている場合も多くあると思われます。

 

これらコーポレート部門の各機能のグローバル化も段階を追って行うことが重要です。

 

欧米多国籍企業ではトップダウンの綿密な戦略・戦術の下、ITシステムをグローバルで統一化する場合が多くありますが、日本企業は現場の知恵を大事に運営している場合も多く、海外でもそれぞれの国で独自に最適化されているケースも多いのが実情です。

例えば、現場に近い情報である顧客管理のシステムをいきなり世界統一にすると、現場に即さない状況になるかもしれません。

一方、財務や経理はグローバルの決済システムの統一化の中で、統一化しやすい分野ではありますが、管理会計の仕組みは顧客管理や人事管理と同じく、国ごとに最適化されている場合もあるため注意が必要です。

何をグローバルに集中的に管理し、何を分散的に行うかをよく考えることが大事です。

本社​コーポレート機能のグローバル化

本社事業部門機能のグローバル化

日本企業、特にB2B企業の場合、日本市場を中心にして事業が発展してきた企業がほとんどです。

日本市場は、事業がある程度の規模に大きくなるだけの規模を持ちます。そのためどうしても日本の顧客が求める品質(Q)・サービス(S)・納期(D)・コスト(C)に合わせて商品が出来上がっていきます。

これを世界に持って行く場合、日本の顧客と同じQCDSの市場では販売は可能ですが、それ以上に広げようとすると、海外の市場を深く理解し、それに合わせた品質・サービス・納期・コストを考えていく必要があります。

一方、北欧などの小国は自国市場では事業規模が大きくなりません。事業のスタートから世界を見て行う必要があります。その結果、異なる市場のニーズを掴み、それに合わせて事業をするマーケティング機能が最初から備わっています。グローバルマーケティングが前提の事業スタートなのです。

日本のB2B企業でマーケッティング機能が小さいのは、この日本市場の規模が原因の一つです。日本を超えて世界に事業を展開するには、日本企業がマーケティング機能をグローバルに備えることが何よりも大事なことだと私たちは考えています。

駐在員の役割の段階的変化

駐在員或いはグローバル人材が海外展開で担う役割はとても大きいです。そしてその役割は海外展開の発展段階で大きく異なってきます。

最初は「開拓者」です。新たな海外市場(国)へ出向き自ら開拓していく、そう言う異国適応力を持った人材が必要です。

次に「事業の伝道者」或いは「自社の運営手法の伝道者」です。自社のことに詳しい人材が海外に出て行きます。

最後は「市場にあった事業展開の創造者」となり、事業の企画力が重要になります。

これを同一人物が担うのは現実的にはとても難しく、人材が入れ替わっていくことが自然だと考えています。

​最初の異国適応力を除き、他はすべて自社の事業や運営の理解や造形に深いことが条件になります。したがって、自社で時間をかけて育成していくことが重要となります。

コミュニケーションのあり様の段階的変化

世界各地の最前線のスタッフと、本社で意思決定を行うスタッフとの間のコミュニケーションはグローバルに事業を展開する上で最も重要なコミュニケーションの一つです。

本社でグローバルに意思決定するスタッフは必ずしも役職者だけではありません。具体的に製品(商品)を企画、開発を行ったり、各国の広告予算を計画したり、駐在員の派遣人数の割り当てを行ったりする担当者も含まれます。

しかし、一方で海外とのコミュニケーションには言葉の壁や、外国人に対する気後れ、時差など、障害が多いのも事実です。また、企業によっては、国を超えた担当者同士の連絡に制限を加えている場合があります。

 

そうなると、例えば、海外の営業スタッフが顧客から得たニーズがあったとしても、営業スタッフの上司→その上司から駐在員→駐在員から駐在員の現地の上司→本社の海外営業部門→海外営業部門から商品企画・開発部門の長→企画・開発担当者となり、ほぼ確実にその情報は伝わらなくなります。

​さらに、現地化を促進する中で、リージョン制を採ることで、フランスの情報が欧州本社を通じて日本本社に伝わると言うようにさらに間に階層が増えます。それによりコミュニケーションに大きなロスが生まれます。

現場と本社間の情報伝達階層の最小化

現地と本社の間のコミュニケーションのあり様は段階的に変化します。

輸出を中心に代理店に任せる形で販売している場合は、コミュニケーションの主体は受注と出荷などの貿易実務です。

販社の設立を行うと決済権限などの運営ルールが生まれ、その運営ルールに基づいたコミュニケーションが増えることになります。ここまでは本社側のコミュニケーションの主体は海外専門部署です。

​その後、本社の事業部門やコーポレート部門の海外拠点への関与が増え、結果としてコミュニケーションが入り組んで行くことになります。海外展開が歴史が長い海外拠点は事業部門が直接コミュニケーションを行っているものの、展開が始まったばかりの拠点は海外事業部門が行うというようなことが起こります。

​しかし、日本企業においては現場の知恵とそこからの最適化を大事にしますので、この入り組んだコミュニケーションを良しとし、その中で少しづつ事業部門やコポーレート各部門と現地が直接コミュニケーションを取る分野や割合を増やしていく、すなわちマトリックス組織的なコミュニケーションが増えると言う動きが理想ではと考えています。

本社と海外拠点における権限の集中と分散

国ごとグローバル化の段階ごとで異なった運営

本社と海外拠点において、何を本社主導で決め、何を海外拠点の現場を中心に決めるのか、という使い分けも大事な点の一つです。

事業に関しては、本社で行う商品開発と、海外拠点で行う商品のカスタマイズ、或いはサービスのどちらが顧客への提供価値が大きいかによって本社と海外拠点の権限の強さが決まります。

製品を企画開発し量産している場合は、商品の価値が大きい場合が多く、結果本社の権限が強くなります。そのためグローバルの市場情報が本社に集まるような権限の集中化は重要です。

一方、顧客の要望を聞いて現場でカスタマイズやサービスを行うところが提供価値が大きい場合、意思決定は現場に近い海外拠点で行う方がよく、権限は分散化している方が効果的です。

上記に記載した内容は、国や事業の状況を鑑みて、現在の状況に即して行うことが大事です。

 

そのため、各国 x 各事業部門という組み合わせの数だけ存在することになります。例えば、ある企業が5事業部あり10カ国に展開しているとすれば、50通りの組み合わせが存在することになります。それらが各々において異なった運営がなされることになります。

したがって、それぞれの段階で何が必要かをしっかり整理し、効率的に運営を行うことが重要です。

​本社の段階的グローバル化に必要な8つの重要事項
一定の事業規模になったB2Bの企業において、グローバル化をさらに促進するには、海外の専門組織では事業の深い理解を行うことが難しくなります。
一方で、欧米の多国籍企業のように、事業や機能と地域のマトリックス組織に一気に移行することは難しいと言うのが現状ではないかと考えています。
現場とのコンセンサスを大事に運営を行う日本の企業ならではの「曖昧さ」を保持した本社のグローバル化を提案していきたいと考えています。

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